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AX(AIトランスフォーメーション)とは?DXとの違い・日本の最新動向と進め方をわかりやすく解説

AX(AIトランスフォーメーション)とは?DXとの違い・日本の最新動向と進め方をわかりやすく解説
「AIを使うかどうか」ではなく「AIを前提にどう変わるか」——いま企業に問われているのが、AX(AIトランスフォーメーション)です。 業務にAIを少し足すDXの次の段階として、組織や業務プロセスそのものをAI前提で再設計する動きが、国家戦略レベルで加速しています。 一方で日本の生成AI個人利用率は26.7%にとどまり、世界に大きく後れを取っているのも事実です。 本記事では、AXの意味とDXとの違い、「人工知能基本計画」などの最新動向、そして失敗しないための進め方までを、最新の統計を交えてわかりやすく解説します。
松園 勝喜

監修者

松園 勝喜

まつぞの かつき

元プライム上場企業の取締役CTO。日本市場の他、米国Nasdaqへの上場支援を手掛ける。

現在はAI・DX・テクノロジー領域における開発およびコンサルティングに従事し、ソフトウェア開発、モバイル技術、IoT、不動産テック領域を中心に、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)やAIトランスフォーメーション(AX)の推進、プロダクト開発支援を行っている。

組み込み系エンジニアとしてキャリアをスタートし、携帯電話を活用した研究開発やソフトウェア開発に従事。
その後、モバイルOS「Tizen」のコミュニティマネージャーとして、日本およびアジア圏での普及活動や技術コミュニティの形成に携わる。

その後、不動産市場の民主化やオープンデータ化をテーマとした不動産テクノロジー領域のプロダクト開発を推進。

メディア活動としてラジオNIKKEIの番組パーソナリティを務め、「US Stock Market Press」「ザ・マネー」などの番組に出演。
テクノロジーやAI分野を中心に解説を行うほか、各国経済指標の解説なども担当している。

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AX(AIトランスフォーメーション)とは

AX(AIトランスフォーメーション)とは、AIを前提に、組織・人・業務プロセス・インフラそのものを設計し直す取り組みのことです。
AIを「業務の一部に足す」のではなく、「AIがあることを前提に、自分たちの仕事のかたちはどう変わるべきか」を問い直すのがAXの本質です。

ここで重要なのは、AI活用とAXは同じではないという点です。
問い合わせ対応の一部を生成AIに任せる、議事録をAIで要約する——こうした取り組みはAI活用ではありますが、それ自体はまだAXとは呼べません。
AXが目指すのは、人とAIの役割分担そのものを組み替え、組織のあり方を変革することだからです。

たとえばカスタマーサポートをAXの観点で再設計すると、AIが一次対応のほぼすべてを担い、人間はAIが扱いきれない複雑な案件と、AIの応答品質を監督・改善する役割へと移っていきます。担当者を「AIで効率化する」のではなく、仕事の流れそのものをAI前提で組み替える。この発想の転換こそがAXの核心です。

AXとDXの違い

AXを理解するうえで欠かせないのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)との違いです。DXがデジタル技術によって業務やビジネスモデルを変革する取り組みであるのに対し、AXはそのデジタル基盤の上にAIの「判断・予測・生成」の能力を組み込み、人とAIの役割分担を再設計する取り組みです。 AXは、DXの次のステップと位置づけられることが多くあります。

観点 DX(デジタルトランスフォーメーション) AX(AIトランスフォーメーション)
中心となる技術 デジタル技術全般 AI(生成AI・AIエージェント等)
主な目的 業務・ビジネスモデルのデジタル化 AIを前提とした組織・業務の再設計
AIの位置づけ 数あるツールの一つ 判断・予測・生成を担う中核
人の役割 デジタルツールを活用する AIと協働し、高度な判断・監督に集中する
ゴール 効率化・新たな価値創造 効率化の先の価値創出+組織そのものの変革

自社が「AI活用」の段階にあるのか、それとも「AX」に踏み出しているのか。この違いを理解することが、次の一手を考える指標になります。

なぜ今AXが注目されるのか

AXがこれほど語られるようになった背景には、二つの大きな流れがあります。

ひとつは技術の成熟です。 2022年末のChatGPT登場以降、生成AIは専門家のものから「誰もが使えるもの」へと一気に降りてきました。
さらに2025年以降は、自律的にタスクをこなす「AIエージェント」や、現実世界でロボットを動かす「フィジカルAI」が実用段階に入りつつあります。

もうひとつは、日本社会が抱える構造的な切迫感です。 人口減少、深刻な人手不足、賃金停滞——従来の働き方の延長線上では成長が描きにくくなったいま、
AXは「やれたら良い改善策」ではなく、「やらなければ立ち行かない経営課題」へと性格を変えつつあります。

【政策】日本のAX最新動向:人工知能基本計画とは

AXの推進を、いまや日本政府が国家戦略として明確に後押ししています。
その象徴が、2025年12月23日に閣議決定された「人工知能基本計画」です。
これは同年に成立した「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(通称・AI法、令和7年法律第53号)に基づき策定された、日本で初めてAI政策を体系的に整理した国家戦略です。

計画は副題に「『信頼できるAI』による『日本再起』」を掲げ、目指す姿として「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」を打ち出しました。
注目すべきは、計画がまず日本の「出遅れ」を率直に認めている点です。基本計画は、日本ではAIが日常の生活や仕事の上で積極的に利活用されておらず、
開発・投資の面でも主要国に後れを取り、その出遅れが年々顕著になっているという現状認識から出発しています。
基礎研究から社会実装までの距離が近いAIにおいて、肝心の「実装が進んでいないこと」こそが日本のAI開発の大きな障害だ、という指摘は重いものです。

そのうえで計画は、施策の柱として「4つの基本的な方針」を示しています。

  1. AI利活用の加速的推進(AIを使う)
  2. AI開発力の戦略的強化(AIを創る)
  3. AIガバナンスの主導(AIの信頼性を高める)
  4. AI社会に向けた継続的変革(AIと協働する)

とりわけ第一の方針では、世代を問わずほとんどの国民が「まず使ってみる」という意識を持つことを掲げ、利活用が進まなかった原因として「AIの効果やリスクへの理解不足」を正面から挙げています。「隗より始めよ」として、まず政府自らが率先してAIを普段使いし、管理職が先頭に立って使う仕組みを導入するとまで踏み込んでいるのも特徴的です。

さらに政策文書はAXという言葉そのものにも踏み込んでいます。基本計画を受けた経済産業省の検討資料では、「各企業や研究機関はどのようなAIトランスフォーメーションに取り組むべきか」を論点として掲げ、AIの利活用・社会実装を加速し、AIを軸とした産業構造の転換(競争力、組織改革、雇用のあり方の変革)を実現することを課題に据えています。AXはもはや一企業のバズワードではなく、産業構造の転換を伴う国家的アジェンダとして位置づけられているのです。

【統計】日本のAX・生成AI活用の現状

理念と政策が整いつつある一方で、現場の数字は厳しい現実を映し出しています。総務省『令和7年版 情報通信白書』の主要データを整理すると、日本のAXは「まだ入口」であることが分かります。

指標 日本 海外・参考
個人の生成AI利用経験率 26.7%(前年9.1%から約3倍) 中国81.2%/米国68.8%/ドイツ59.2%
生成AIの活用方針を策定した企業 約5割 中国・米国・ドイツ いずれも約9割
同・企業規模別(日本) 大企業 約56%/中小企業 約34%
生成AIを利用しない理由トップ 「使い方が分からない」48.3%

年代別に見ると、課題はさらに鮮明です。個人の利用率が最も高いのは20代の44.7%で、以下、40代29.6%、30代23.8%、50代19.9%と続き、60代は15.5%にとどまりました。意思決定層に近い中高年層ほど利用が進んでいない現実は、AXを「上から」推進しようとする企業にとって小さくない壁です。

企業側でも、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2025」によれば、言語系生成AIを「導入済み」または「導入準備中」と答えた企業は41.2%と、前年の26.9%から大きく伸びています。裾野は確実に広がりつつありますが、「方針を持っているか」という一段深い問いになると、まだ半数前後で足踏みしている状態です。

そして、最も本質的なのが「何のために使うか」の差です。情報通信白書によれば、日本企業が生成AI活用の効果として挙げるのは「業務効率化」や「人手不足の解消」が中心。一方で米国・ドイツ・中国の企業は「新規顧客の獲得」や「新しいイノベーションの創出」を重視する傾向が強くあります。日本ではAIが「コストを下げる道具」、海外では「価値を生む基盤」として捉えられている——この認識の差こそが、AXの深さの差として表れています。

AXを成功させる3つのポイント

では、AXをどう前に進めればよいのか。鍵は次の3つです。

① 全体のAIリテラシーを底上げする

大前提として、社会全体・組織全体のAIリテラシーの底上げは不可欠です。基本計画が「AIの効果やリスクへの理解不足」を出遅れの主因に挙げ、「まず使ってみる」機運の醸成を掲げているのは、まさにこの土壌づくりにあたります。「使い方が分からない」が利用しない理由の最多(48.3%)である以上、全員が最低限の操作と勘所を身につける研修・環境整備は、AXの出発点です。

ただし、リテラシーの底上げ「だけ」では変革は起きません。全員を平均的に「そこそこ使える」状態にすることと、組織の仕事のかたちが変わることは別の話だからです。

② 内側の「知的好奇心がある人材」が変革をリードする

AXの本質は「業務プロセスの再設計」です。だからこそ鍵を握るのが、組織の内側にいる知的好奇心の強い人材です。新しいツールを面白がり、自分の業務に当てはめては試行錯誤し、「ここはAIに任せられる」「この判断は人が持つべきだ」という線引きを肌感覚で掴んでいく人たち。彼らはその業務の文脈と暗黙知を最もよく理解している当事者でもあります。

現場の文脈を知らない人間が外から最適解を描くことには限界があります。どこに無駄があり、どこに人の判断が効いているのか——それを知っているのは、その仕事を毎日担う当事者だけです。リテラシー教育で「全員の底」を上げつつ、内側の好奇心ある人材で「変革の山」を立てる。この両輪がAXには欠かせません。

③ 外部からの「伴走支援」で変革を自走させる

内側の人材だけでAXは完結しません。外部からの伴走支援が同じくらい重要になります。理由は3つあります。

  • 視野の問題:内側の人材は業務に精通している反面、「自社のやり方」という前提から自由になりにくい。外部の伴走者は他社・他業種での経験から、「その工程はそもそも要らないのでは」といった、内側からは見えにくい問いを持ち込めます。
  • 技術の進化速度:AIエージェントやフィジカルAIに象徴されるように、技術は数か月単位で更新されます。本業を抱える現場が最新動向を追い続けるのは難しく、外部の専門家が最新知見を「ライブラリ」として持ち込むことで、車輪の再発明を防げます。
  • 推進の持続性:AXは試して・評価して・作り直す反復のプロセスです。基本計画も3原則のひとつに「アジャイルな対応」(PDCAを回し変化に即応する)を掲げています。日々の業務に追われる現場では改善が後回しになりがちで、外部の伴走者が「並走者」として変革を止めない役割を担います。

重要なのは、外部に「丸投げ」しないことです。DXがしばしば失敗したのは、経営者が変革そのものをベンダーに丸投げし、肝心の事業・業務の変革に当事者が踏み込まなかったからだと指摘されています。「内側の当事者」と「外側の伴走者」が噛み合ったとき、AXは初めて自走を始めます。

AIは「ツール」から「インフラ」へ

AXの到達点は明確です。AIは「一部の業務で使うツール」から、組織を支える「インフラ」へと位置づけが変わっていきます。

いまの多くの現場では、AIは「特定業務を効率化する便利な道具」として使われています。議事録の要約、メールの下書き、資料のたたき台づくり。これらは価値がありますが、「AIを足し算で使っている」状態にすぎません。電気にたとえれば、特定の部屋にだけ照明を入れているようなものです。

インフラになるとは、AIが「あって当たり前の前提」になることです。電気や通信網のように、一つひとつの業務でその存在を意識しないほど、組織のあらゆる活動の土台に溶け込んでいる状態。意思決定の前にはAIの分析があり、新しい企画にはAIとの壁打ちがあり、顧客接点の多くはAIが一次対応し、人はより高度な判断に集中する。そこではもはや「AIを使うかどうか」は議論の対象ではなく、「AIがあることを前提に何をするか」だけが問われます。

基本計画が「AIが日常的に使われている社会」を掲げているのも、この方向性と重なります。AIが全社の前提インフラになって初めて、業務プロセスも、人の役割も、ビジネスモデルそのものも組み替わっていく。それこそがAX——AIトランスフォーメーションが指し示す変革の姿です。

まとめ

  • AXとは、AIを前提に組織・人・業務プロセス・インフラを再設計する取り組みであり、DXの次のステップに位置づけられる。
  • 日本政府は2025年12月に「人工知能基本計画」を閣議決定し、AI利活用とAIを基軸とした組織経営改革を国家戦略として推進。「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」を目指している。
  • 一方で日本の個人の生成AI利用率は26.7%にとどまり、米中独と大きな差がある。「効率化」止まりで「価値創造」に届いていないのが日本の課題。
  • AX成功の鍵は、①リテラシー底上げ ②内側の好奇心ある人材 ③外部の伴走支援の3つ。
  • 最終的にAIは「一部業務のツール」から「前提のインフラ」へ。日本には大きな伸びしろがあり、「使う」から「前提にする」への一歩が問われている。

よくある質問(FAQ)

Q1. AX(AIトランスフォーメーション)とは何ですか?

AIを前提に、組織・人・業務プロセス・インフラそのものを設計し直す取り組みです。AIを業務の一部に足すのではなく、人とAIの役割分担を組み替えて組織のあり方を変革する点が特徴です。

Q2. AXとDXの違いは何ですか?

DXはデジタル技術による業務・ビジネスモデルの変革を指すのに対し、AXはそのデジタル基盤の上にAIの判断・予測・生成の能力を組み込み、AIを中核に据えて業務を再設計する取り組みです。AXはDXの次のステップと位置づけられます。

Q3. 日本の生成AIの利用率はどのくらいですか?

総務省『令和7年版 情報通信白書』によれば、個人の生成AI利用経験率は26.7%です。前年の9.1%から約3倍に伸びましたが、中国81.2%・米国68.8%・ドイツ59.2%と比べると依然として大きな差があります。

Q4. AXを始めるには何から取り組めばよいですか?

まず全社のAIリテラシーを底上げし「まず使ってみる」土壌をつくること、次に現場で業務を熟知し新技術を面白がれる「知的好奇心のある人材」に変革をリードしてもらうこと、そして外部の伴走支援で最新知見と継続的な改善を取り入れることが基本の流れです。

Q5. 中小企業でもAXに取り組めますか?

取り組めます。日本では生成AIの活用方針を策定した企業が大企業約56%に対し中小企業約34%と差がありますが、これは逆に伸びしろが大きいことを意味します。小さな業務単位から試し、成功事例を横展開していくのが現実的です。

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金子 健哉

執筆者

金子 健哉

株式会社property technologies - CTO(最高技術責任者)

前職では、クライアントのWEBサイトシステムの開発、社内のIT開発を経験した後、同社CTOに就任。マーケティングプラットフォーム開発に成功。
フリーランスに転じて企業のITコンサルティング、システム開発の請負等を行った後、2021年5月よりproperty technologiesグループ参画。
CTOとしてエンジニアを統括し、プラットフォーム開発や社内システム開発に従事。
ITコンサルティングおよびシステム開発の請負や、プラットフォーム開発や社内システムの設計・構築まで幅広く手がける。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」への出演をはじめ、メディアにも出演。

前職では、クライアントのWEBサイトシステムの開発、社内のIT開発を経験した後、同社CTOに就任。マーケティングプラットフォーム開発に成功。
フリーランスに転じて企業のITコンサルティング、システム開発の請負等を行った後、2021年5月よりproperty technologiesグループ参画。
CTOとしてエンジニアを統括し、プラットフォーム開発や社内システム開発に従事。
ITコンサルティングおよびシステム開発の請負や、プラットフォーム開発や社内システムの設計・構築まで幅広く手がける。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」への出演をはじめ、メディアにも出演。

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